介護離職防止対策とは

国は要介護者増加の対策として介護保険制度を導入しましたが、
要介護者の増加と共に介護給付金も増加してしまいました。
このような状況に対し国は在宅介護の促進に舵を切りました。
その一例をあげると、特別養護老人ホーム利用が
これまでの「要介護度1」から「要介護度3」に引き上げられ、
要介護度の低い人は在宅での介護を行うということになり、
結果的に介護者の負担も大きくなることになりました。

国は要介護者増加の対策として介護保険制度を導入しましたが、要介護者の増加と共に介護給付金も増加してしまいました。このような状況に対し国は在宅介護の促進に舵を切りました。
その一例をあげると、特別養護老人ホーム利用がこれまでの「要介護度1」から「要介護度3」に引き上げられ、要介護度の低い人は在宅での介護を行うということになり、結果的に介護者の負担も大きくなることになりました。

近年 増加している介護離職者

Increase in Turnover for Nursing Care

社会問題化する介護離職

介護離職とは介護状態となった家族や身近な人の介護のため、現在の仕事を退職することですが、その多くは親の介護が必要となる40〜50代の働き盛りの人たちです。

近年、その介護離職者の増加が社会問題化してきています。日本の少子高齢化の進行は、今後、要介護者のさらなる増加が見込まれ、それに伴い介護離職者数もさらに増加する懸念があります。

介護離職者にとって収入源を無くすことは経済的に困難になることも多く、また、日々の介護は介護者にとって精神面でも大きな負担ともなってきます。

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介護離職の現状と背景

介護離職者増加の背景としては、高齢化の進行による要介護者の増加とともに少子化による介護者数の減少があります。総務省発表の「平成29年就業構造基本調査結果」では、過去1年間の介護離職者数は約9.9万人となっており、過去10年間の介護離職者数は年間約10万人弱で推移している現状です。

また、経済産業省では介護離職による経済的損失は約6,500億円になるとし、介護離職者の増加は労働力不足や人材流出を招き、経済の減速につながるとの懸念が示されています。

次に介護離職者の再就職の状況を見ると、1年以内に再就職できた人は男性51.1%、女性35.7%となっています。しかし離職期間が長引いたり、年齢が上がるほど再就職は困難になる傾向があります。

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介護離職に至る原因と理由

Cause and Background

介護離職者の離職理由

介護は突然訪れ、一旦、介護が始まるとその後介護は休みなく続きます。介護は身体的にも精神的にも負担が大きく、仕事との両立は大変困難です。

令和元年度の厚生労働省の委託調査では、介護を機に離職する原因として「仕事と介護の両立が難しい職場だったため」が59.4%と最も多くなっており、勤務先の制度や職場環境が大きく影響していることが分かります。これは勤務先の制度や職場環境を改善することで介護離職の防止対策ともなり、安心して仕事ができる環境整備が重要であることを示しています。

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介護離職後の問題

突然始まりいつまで続くかわからない介護ですが、長期的に見ると介護はいつか終わり、その後も介護者の生活は続きます。その時、離職による無職状態ではその後の生活は困難なものになります。

介護離職した人は、離職したことによって自身の将来を犠牲にしてしまうことになるということです。

本来、介護による身体的・精神的負担を減らすために離職したにもかかわらず、実際には「精神面」64.9%、「肉体面」56.6%「経済面」74.9%の人が離職後「負担が増えた」と回答しており、離職したことを後悔する場合も多くあります。

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仕事と介護の両立は可能か?

Balancing Nursing Care and Work

仕事と介護の両立は難しい?

親などの介護に直面したとき、仕事を辞めたくなかったにも関わらず、仕事と介護の両立のため心身への負担が大きくなり、離職に追い込まれた人は仕事をしながら介護する人の半数以上にもなっています。そして、離職後には精神的・肉体的・経済的負担が増え、1年以内に再就職する人が男性で半数を超える結果となっています。

個人の力で仕事と介護の両立を長期間続けることは困難ですが、離職したとしてもその後も介護は継続し介護者の負担は続きます。特に離職後の経済的負担は大きなものとなり、収入の減少は家庭生活にも大きなダメージを与えることになります。

このように介護離職には大きなリスクがあるので、離職を検討する前に「仕事と介護の両立」に関する様々な情報や諸制度を知っておくことは大切なことなのです。

介護離職防止の方法は?

前記の通り介護離職には様々なリスクがあるので、できる限り介護離職しないよう介護に直面する前の予防は大切です。介護離職の予防には、親も含めた家族や専門家などへの相談や「仕事と介護の両立」に関する諸制度を知っておくことです。

介護に関しては、社会資源としての「介護保険制度」の利用があり、市町村ごとにある地域包括支援センターで介護相談の受付を行なっています。また、仕事と介護の両立を助ける制度としては、2015年9月、国が「介護離職ゼロ」を掲げて打ち出した諸制度や施策があり、これらの諸制度は企業・団体などでの導入が規定されているので、それらの制度の利用ができます。

介護保険サービスの利用と職場で導入されている国の諸制度の利活用で、介護者やその家族の負担を軽減し仕事と介護が両立できる状況の構築は可能ではないでしょうか。

企業が行う仕事と介護の両立支援

Support for Work-life Balance

仕事と介護の両立支援の必要性

国は、介護離職防止対策として「育児・介護休業法」をもとに、就労者が介護に直面しても仕事が継続できるよう法律の整備を行い、企業に対して「仕事と介護の両立支援制度」の導入を義務付け、就労者に対しての制度利用や取り組みを推奨しています。さらに両立支援等助成金「介護離職防止支援コース」の助成金制度や、就労者に対する「介護休業給付金」の支給制度も設けられています。

一般的に70代後半〜80代が介護が必要となる年齢といわれ、その時の子どもの年代の多くは40代後半〜50代となっています。その年代は働き盛りで、会社で重要なポジションに就いているケースも少なくありません。そして、団塊の世代のおよそ800万人が後期高齢者となる2025年以降、要介護者数が増大することが予測され、その結果介護離職者数も増大する懸念が指摘されています。

介護離職はその当事者だけでなく、企業にとっても中核となる大切な人材を失うこで、その損失は小さくはないでしょう。

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仕事と介護の両立支援制度

仕事と介護の両立支援制度には、育児・介護休業法を根拠とする「介護休業」をはじめ「介護休暇」「短時間勤務等の措置」などや、企業が就労者の仕事と介護の両立を支援する際の具体的な取り組み方法や「介護離職を予防するための両立支援対応モデル」を厚生労働省や総務省などが策定し広報を行っています。

厚生労働省では制度導入の取り組みを進める際に活用できる「お役立ちツール」も用意されており、そのツール類は「人事労務担当者向け」「管理職向け」「社員向け」など対象別にPDFデータや動画が用意され、さらには介護休業制度のポータルサイトなども用意されています。しかし、それらの情報量はかなりのボリュームとなっているので、予備知識無しでの取り組みは制度内容の把握だけでも大変な作業になると思われます。

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近い将来の介護リスクへの備え

Preparing for Future Risks

男性介護者が増加している

これまで「嫁による介護」から2000年代以降、要介護者の夫や妻が介護する配偶者介護や、実子が介護することが増加しており、それに伴い男性の介護者も増加しています。

突然訪れる親の介護は誰にも予測やコントロールができません。突然介護に直面することは誰にも起きる可能性があるということです。それが企業の中枢を担う人で、その人が離職してしまえば企業にとっては大きな損失となります。

このように男性介護者の増加は、企業にとってその中枢を担う社員が介護者となり、その数が増加することを意味しており、企業経営への影響は大きなものになります。キャリアを積んだ中枢を担う社員が介護離職してしまうことは、当然、企業にも本人にとっても大きな損失です。

しかし、介護をしながら仕事をする社員はどうでしょうか。
一見、問題なく両立できているように見えても、出勤前、退社後の介護は早朝・深夜までに及び、週末も休みなく介護をする生活になると、介護疲労や介護ストレスを抱え込み業務効率の低下を招き、それは職場にも影響することになります。

本格的な介護時代に備える

介護離職に対して明確な問題意識を持つ企業はまだ少なく、多くの企業にとって「介護」はまだ先の問題のようですが、漠然とした不安を持つ企業は少なくありません。少子高齢社会の日本の人口構成を見ると、これまで述べてきた状況になることは間違いなく、今後ますます介護問題はその広がりを見せることになります。

企業にとって介護問題への取り組みは、まず「育児・介護休業法」に沿った制度の導入と対策がその出発点となります。そして、この法律の規定を基にして、これからの本格的な介護時代の介護者となる就労者の様々なニーズに対応でき、企業や従業員の実情に合わせた制度に更新していくことが大切です。

ま と め

Conclusion

介護離職が及ぼす影響

これまで述べてきたように、突然直面する介護そしてその後の介護離職は、介護する就労者や企業にとってもその影響は大きなものがあります。誰しも避けることのできない介護にどのように備えるのか? は就労者、企業ともに今後、避けることのできない課題です。

就労者の仕事と介護の両立支援は介護する就労者本人のためだけでなく、むしろ企業の経営資源とも言える「人財損失」を防止する取り組みともなるものです。現在、介護に直面している就労者がいない企業なら本格的な介護時代への備えとして、また近い将来への投資として、早急な取り組みが必要ではないでしょうか。

【介護保険制度編】

【両立支援制度編】

【介護保険制度編】と【両立支援制度編】

本検定では介護離職の防止や予防のための仕組みの知識・情報を学び、企業・従業員共に仕事と介護の両立を実現することを目的とした認定資格です。本検定には介護離職防止に必要な制度によって【介護保険制度編】と【両立支援制度編】に分かれており、それぞれの公式テキストが用意されています。

【介護保険制度編】

【両立支援制度編】

介護離職防止アドバイザー検定【介護保険制度編】では、介護保険制度の基本から介護保険サービス利用までの流れ、そして実践的な内容までを網羅し、介護に直面する前に介護保険制度の正しい知識を学んでおくことで、その知識を通して介護離職防止のための制度利用の方法や選択肢を知ることができる内容となっています。

介護離職防止アドバイザー検定【両立支援制度編】は、仕事と介護の両立のための国が定める支援制度を中心に編集しており、育児・介護休業法をはじめとする国の「介護離職ゼロ」施策や支援制度の紹介、それらの制度の企業への導入方法や導入事例、助成金や給付金などを厚生労働省などの情報をもとに、企業や従業員などそれぞれの立場に分けて解説しています。

現在、まだ介護離職者がいない企業や介護に直面する前の従業員の方には、将来の予防策として、身内の介護に直面した従業員やその企業には介護保険制度、両立支援支援制度の利用方法などがお役に立てるものと思いますので、ぜひ、介護離職の予防・防止のために本検定講座の学習をお勧めします。